「システム・クラッシャー」ラストのシーンを考察/こんな鮮烈で心がズキズキする作品は久しぶりだ。

システム・クラッシャー
「システム・クラッシャー」あらすじ

嵐のような9歳の女の子ベニー。幼少期、父親から受けた暴力的トラウマ(赤ん坊の時に、おむつを顔に押し付けられた)を十字架のように背負い手の付けようのない暴れん坊になる。里親、グループホーム、特別支援学校、どこに行こうと追い出されてしまう、ベニーの願いはただひとつ。かけがえのない愛、安心できる場所、そう!ただママのもとに帰りたいと願うだけ。居場所がなくなり、解決策もなくなったところに、非暴力トレーナーのミヒャはある提案をする。ベニーを森の中深くの山小屋に連れて行き、3週間の隔離療法を受けさせること…。

出典:公式サイト

システム・クラッシャー

「システム・クラッシャー」のラストシーンを考察していく。

最初に言っておくと、こんな鮮烈で心がズキズキする作品は久しぶりだった。

みくと

二、三日はやられる…。

ネタバレも含むため、本作を観賞していない人は注意してほしい。

この記事の筆者
Minimalist Mikuto

【ミニマリストMikuto】のブログを運営している「みくと」

15歳の頃、映画にハマる。
高校生の頃、三年間で約900本の映画を鑑賞。
20歳の頃、これまでに観てきた映画が1,200本を超えるが映画熱が鎮火。空白の3年間を過ごすことに。
23歳の頃、再び映画熱に火が灯り始める…。

目次

「システム・クラッシャー」のラストシーン考察

ラストのシーンを考察するにあたり、まだ観賞していない人はネタバレになるため注意してほしい。

ラストは、ベニーが治療を受けにアフリカへ飛び立つシーンになる。バファネが見送るなか、ベニーは機内の持ち込み検査に並ぶ。しかし、ぬいぐるみを荷物検査に通したくないといい、そのまま持ち込もうとする。係員が止めに入ると、ベニーは空港から脱出を図り、上階で外へと飛び出す。そして最後はベニーが不適な笑みを浮かべながらジャンプするのだが、そこで画面に亀裂が入り物語はエンドロールを迎える。

これを観た観客は、モヤモヤするだろう。

自殺を示唆するシーンでもあるため、観客は困惑する。しかし、ベニーは自殺をするような子には見えなかったのも事実である。もちろん、彼女が行き場をなくし、ことごとく信頼している人に見放された現実を考えると、絶望の後に上階から飛び降りたエンディングも想像できる。

観客に想像の余地を与えたことで、ベニーの気持ちを初めて深く理解しようとするのではないだろうか。私はベニーが自ら命を絶つような子には見えなかったが、それでも命を絶ってしまったのではないかと思う。いや、正確には命を絶とうとして飛び降りたのではないかもしれない。彼女はいつだって生き抜こうと必死だった。

ではなぜ、飛び立つようなシーンで終わったのか。

それは、きっと彼女が飛び立ちたかったからなのではないだろうか。自由を求めてか、母の元に帰るためにか、ミヒャと施設で出会ったときに話した“あの鳥”のように、翼を広げて飛び立とうと考えたのではないだろうか…。

そのようにして考えると、ベニーの性格とも一致しそうな気がした。

私はベニーの心優しい側面を大事にしたい。そして、いつか彼女の感情がコントロールされることを祈りたい。

システム・クラッシャー

鮮烈な感情を表すピンク色

ベニーはいつも赤やピンクの服を着ている。

ピンクにはさまざまな意味があるが、私たちがイメージするように「愛」の意味も込められている。そしてベニーが来た場合、これは愛の希求に変わる。母に愛されたい。誰かに愛されたい。必死でそれを伝えようとするベニーの心が表れているのだ。

そして同時にエネルギーそのものを表すピンク。ベニーは強いエネルギーそのもの。爆発すれば、周りの人間や物もろとも巻き込む強いエネルギーがある。

ピンク色の服は、ベニーの感情を鮮烈に表した色だ。

システム・クラッシャー

まとめ

本作を通して何を思うかは、人それぞれだろう。

しかし、心が苦しくなることは目に見えてわかる。それとどう向き合うかであなたの価値観がわかるのではないだろうか。

ここまでインパクトの強い作品に出会ったのは久しぶりである。

ぜひ劇場に足を運んで観賞してみてはどうだろう。

システム・クラッシャー
「システム・クラッシャー」

【監督・脚本】
ノラ・フィングシャイト

【出演】
ヘレナ・ツェンゲル(ベニー)
アルブレヒト・シュッフ(非暴力トレーナー、ミヒャ役)
ガブリエラ=マリア・シュマイデ(ソーシャルワーカー、バファネ役)
リザ・ハーグマイスター(ベニーの母親、ビアンカ・クラース役)

【日本劇場公開日】
2024年4月27日

【時間】
125分

【国】
ドイツ

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この記事を書いた人

中学高校で映画にハマり、20歳までに鑑賞した作品は1,000を超える。
現在はフリーライターとして、映画のコラムや企業のホームページなどの執筆を担当。映画のジャンルは問わず、面白そうな作品はなるべく映画館で鑑賞する“映画館好き”でもある。

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