「猿の惑星 キングダム」猿側の視点で描かれる猿(エイプ)ドラマ/考察レビュー

猿の惑星 キングダム
「猿の惑星 キングダム」
出典:映画.com
「猿の惑星 キングダム」あらすじ

映画史に残る神話的名作シリーズ『猿の惑星』完全新作! 今から300年後の世界、猿たちは絶対的支配を目論み、巨大な帝国<キングダム>を築こうとしていた。一方、人類は退化し、まるで野生動物のような存在となっていた。 そんな世界で生きる若き猿ノアは、ある人間の女性と出会う。 彼女は人間の中で“誰よりも賢い”とされ、猿たちから狙われていた。 猿と人間の共存は不可能なのか。はたして、この世界で生き残るのは―。 完全新作として描かれる新たな“猿の惑星”。 ノアが出会った人間の女性に隠された秘密とは何なのか。 進化は本当に“彼ら”を選んだのか。この惑星に隠された驚くべき真実とは―!

出典:公式サイト

本作を初めて観る人は、猿が人間を支配する独特な世界観に躊躇う人もいるかもしれない。

だが、実はそうでもない。

本作はヒューマンドラマならぬ、猿による猿(エイプ)ドラマが繰り広げられるため、感情移入は容易だ。序盤から本作の世界観にどっぷり入り込める。

むしろ猿の村に現れる人間、ノヴァに不信感を抱く人のほうが多いだろう。

ノヴァは人間が喋れなくなった猿の惑星で、言葉を発する知能の高いエコー(人間)として登場する。しかし、物語が進むにつれてノヴァの行動は違和感だらけ…。この違和感や不信感は、本作のラストを見れば腑に落ちるのだが、ここでレビューするのは避けておこう。

SF映画らしいミステリアスな雰囲気と意外な展開に目が離せない本作は、旧シリーズを知らない人でも楽しめる作品に仕上がっている。「メイズ・ランナー」のウィス・ボール監督らしい作品とも言えるのではないだろうか。

本記事では、猿の視点で描かれる興味深い猿(エイプ)ドラマに迫っていこう。

この記事の筆者
Minimalist Mikuto

【ミニマリストMikuto】のブログを運営している「みくと」

15歳の頃、映画にハマる。
高校生の頃、三年間で約900本の映画を鑑賞。
20歳の頃、これまでに観てきた映画が1,200本を超えるが映画熱が鎮火。空白の3年間を過ごすことに。
23歳の頃、再び映画熱に火が灯り始める…。

目次

猿の視点で描かれる猿(エイプ)ドラマ「猿の惑星 キングダム」

主人公の「ノア」は、同じ種族の猿たちに村を奪われる。その猿たちを追っていくなかで、オランウータンの「ラカ」と、謎の少女「ノヴァ」に出会う。ノアは彼らと行動をともにし、プロキシマス・シーザーが牛耳る“キングダム”へと辿り着く。

ノアの物語は、自分の村が襲われることから始まるのが、感情を揺さぶられるドラマがある。この入りからしてノアに感情移入を果たす人たちが続出するだろう。そして物語が進むにつれ、ノアが成長する姿にますますノア(猿)視点へと移行する。

さまざまなドラマを紡ぎながら、とうとうノアはキングダムに到達。そこではさまざまな事実に直面する。

そしてノアが直面する事実に、ようやく観客は自分たちが人間であることを認識できるのかもしれない。ここまでノアに共感するばかりで、猿側の視点に立っていた私たちは、猿側の視点から一旦離れる。そして、我々人類に恐怖を覚えるノアに申し訳なさを感じる。

いや、もしかするとここでもノア(猿)側に共感し続けるのかもしれない。人類に変わる猿人たちに深く共感するあまり、そしてノヴァの行動に不信感を募らせるあまりに、私たち観客も猿側の視点から離れられないかもしれない。

果たして人間と猿が本当に共存できるのか…。それは本作を見てから判断してほしい。

「猿の惑星 キングダム」
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「猿の惑星 キングダム」は過去作を観ていない人でも楽しめる!

猿の惑星を観たことがない人でも本作は楽しめる。

猿に感情移入ができることも先述した通りだが、SF世界でのアクションやアドベンチャー要素が強いのも大きく影響しているだろう。

主人公ノアの成長や冒険は、観るものをハラハラさせるしドキドキもさせる。そして新たなシリーズの幕開けとなるノアの成長物語は、面白い。

本作をきっかけに旧シリーズを見返そうと思う人は多いと思う。

もちろん、前シリーズや旧シリーズを観てきたファンへの配慮も忘れてはいない。人間の少女にノヴァと名をつけたり、シーザーの物語を語る場面は、旧シリーズを知っていればさらに世界観へのめり込めるだろう。

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ネタバレ注意!「猿の惑星 キングダム」の“キングダムの意味”

ここからは作中のネタバレを含むため、本作をご覧になっていない方は注意してほしい。

猿の惑星にまでは到達できなかったプロキシマス・シーザー。キングダムというタイトルは秀逸だ

確かに人類は衰弱の一途をたどり、猿の惑星と化した。しかし、それは表面上である。ノアのようにいくつかの村が点在し、初代長老のシーザーをまったく知らない者もたくさんいる。これでは猿の惑星としてはあまりにも統制が取れていない。

本作に出てくるプロキシマス・シーザーは、猿類の統一を図り、本当の意味での猿の惑星を築こうとした。しかし、キングダム(国)をつくるまでに留まる。(国と言えるかどうかも怪しいが)

そして、人類はまだ生きていた。つまり猿の惑星は未だ猿の惑星ではなく、人間との共存か戦闘は避けられないのだ。

猿の惑星は、いまだ国を作るまでにしか至らない。
キングダムとは、人間との共存か争いかを選択しなければないことを示唆する、秀逸なタイトルであるのだ。

猿の惑星を新たな切り口から物語る今作。ウィス・ボール監督の手腕が光る面白い内容に、次回作への期待が膨らむばかりである。

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「猿の惑星 キングダム」まとめ

本作は過去の「猿の惑星」シリーズを知らなくても、十分に楽しめる。

この作品がトリガーとなり旧シリーズの「猿の惑星」を観賞することもあり得るだろう。

猿の惑星という唯一無二な世界観と衝撃の展開、そして魅力的なキャラクターたちは、世代を超えて人々の心を掴む。

ラストも非常に興味深い。第一作目の「猿の惑星」ほどではないが、本作のラストも衝撃的である。

まだ観ていない人は、ぜひ劇場にて圧巻の映像体験と衝撃のラストを経験してほしい。

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「猿の惑星 キングダム」

【監督】
ウェス・ボール

【出演】
オーウェン・ティーグ(ノア)
フレイヤ・アーラン(ノヴァ)
ケビン・デュランド(プロキシマス・シーザー)

【日本劇場公開日】
2024年5月10日

【時間】
145分

【国】
アメリカ

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この記事を書いた人

中学高校で映画にハマり、20歳までに鑑賞した作品は1,000を超える。
現在はフリーライターとして、映画のコラムや企業のホームページなどの執筆を担当。映画のジャンルは問わず、面白そうな作品はなるべく映画館で鑑賞する“映画館好き”でもある。

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